
デジタル形式の遺言書、日本では試みが始まったばかり
ここで重要なことをお伝えしておきます。2025年11月現在、日本ではパソコンやスマホで作成したデジタル遺言書には原則として法的効力が認められていません。つまり、民間のアプリやサービスで作成した遺言書をそのまま保存しても、法的な拘束力はないのです。
しかし、状況は変わりつつあります。
公正証書遺言については、2023年6月の法改正により、2025年中のデジタル化開始が決定しました。公証役場での手続きがオンライン化され、電子データでの作成・保管が可能になります。
さらに、自筆証書遺言についても、法務省が法制審議会で検討を重ねており、2025年7月には中間試案がまとめられました。新制度では、証人の立ち会いと録画を要件に、自筆での記述や押印なしでもパソコンやスマホで遺言書を作成できるようにする方向で議論が進んでいます。
つまり、日本のデジタル遺言書は、まさに「試みが始まったばかり」の段階なのです。法制度が整備されつつある過渡期であり、今後数年で大きく変わる可能性があります。
なぜ今、デジタル資産について考える必要があるのか
一方で、デジタル資産を対象にした遺言(1つ目の意味)については、今すぐにでも考えておく必要があります。
従来の遺言書では、不動産や預貯金、有価証券といった「目に見える財産」については詳しく書かれていても、デジタル資産については触れられていないことがほとんどです。土地や建物のように登記簿があるわけでもなく、預金通帳のように物理的な証拠があるわけでもありません。だからこそ、きちんと記録を残しておかないと、遺族が存在すら気づかないまま、大切なデータや資産が永遠に失われてしまう可能性があるのです。
「このSNSアカウントは削除してほしい」「クラウドの写真フォルダは家族に見てもらいたい」「この暗号資産ウォレットの秘密鍵はここに保管している」といった具体的な指示を、たとえ法的効力のある形式でなくとも、エンディングノートなどに残しておくことは、家族への大切な配慮になります。
すべての人に関係する、新しい時代の終活
コロナ禍を経て、私たちの生活はますますデジタルシフトが進みました。在宅ワークが増え、オンラインでのコミュニケーションが日常になり、キャッシュレス決済が当たり前になった今、デジタル遺言は決して「一部の人だけの問題」ではありません。
スマホを持っているあなた、ネットショッピングを利用しているあなた、SNSで情報発信しているあなた。すべての人に関係する、新しい時代の「終活」なのです。
このコラムでは、デジタル資産をどう遺すか、そしてデジタル形式でどう遺言を作るか、この2つの視点から、あなたに合ったデジタル遺言のかたちを一緒に考えていきましょう。法制度の最新動向も踏まえながら、今できることを探っていきます。


