登記義務化と国庫帰属の狭き門――2025年、相続した土地をどうすべきか(2025年相続関連10大ニュース・第2位)

相続登記義務化と相続土地国家帰属制度

「親が亡くなって実家の土地を相続したけれど、誰も住まないし、どうしよう」――そんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか。

2024年4月から、相続登記が義務化されました。そして2025年、この義務化の「実効性」が現実のものとなり始めています。一方で、「いらない土地は国に返せる」と期待された国庫帰属制度も、実際には厳しい現実が見えてきました。

2025年は、相続した土地を「放置できない」時代が本格的に到来した年だったのです。

相続登記義務化:「3年以内に登記しないと過料10万円」

2024年4月1日、改正不動産登記法が施行され、相続登記が義務化されました。

どんな義務?

相続または遺贈により不動産を取得した人は、その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請する義務を負います。

この義務に違反し、かつ「正当な理由」がない場合には、10万円以下の過料が科される可能性があります。

「正当な理由」って何?

法務省が例として挙げているのは:

  • 相続人が多数に上り、戸籍収集や相続人の把握に時間を要するケース
  • 相続人間で紛争が生じており、遺産分割に時間を要するケース
  • 書類の紛失などで、やむを得ず準備に時間がかかっているケース

単に「忙しい」「費用がかかる」といった事情だけでは、通常は認められにくいとされています。

過料はどう決まる?

期限内に登記がされていないとき、登記官が相続人に催告を行います。それでも申請がなされない場合、過料事件として管轄地方裁判所に通知されます。

2025年時点では、全国的な統計はまだ限られており、「機械的に大量の過料が出ている」という状況ではありません。ただし、商業登記(会社の役員変更登記など)では過料が形式的に運用されている前例があり、今後、相続登記についても一定数の過料決定が出る可能性が高いと見られています。

2025年は、義務違反に対する実際の制裁が現れ始める端境期だったと言えるでしょう。

相続土地国庫帰属制度:「いらない土地は国に返せる」はずだったが…

一方で、「相続した土地を国に引き渡せる」制度も2023年4月に始まりました。相続土地国庫帰属制度です。

制度の仕組み

一定の要件を満たす土地について、負担金(10年分の管理費相当)を支払えば、国に引き渡すことができる――これが制度の骨子です。

「いらない土地を相続したら、国に返せばいい」と期待した人も多かったのではないでしょうか。

厳しい現実:承認率は実質47%

ところが、2025年9月末時点での統計を見ると、厳しい現実が見えてきます。

  • 申請件数:4,500件超
  • 国庫帰属が認められた件数:約2,100件
  • 申請全体に対する帰属割合:約47%

つまり、申請しても半分程度しか認められていないのです。

「承認率93.5%」の数字のカラクリ

法務省の統計を別の角度から見ると、「承認率93.5%」という数字も出てきます。これは「帰属数 ÷(帰属数+却下・不承認)」という計算です。

つまり、「正式に審査まで進んだ案件の中では、多くが要件を満たしている」という見方もできます。

でも、ここに落とし穴があります。取下げ件数が801件に達しているのです。

なぜ取り下げられるのか?

取下げの理由として報告されているのは:

  • 自治体や国の機関が当該土地の活用を決定したため、別の形で活用されるケース
  • 隣接地所有者が土地を引き受けてくれることになったケース
  • 農業委員会などの調整で農地として利用継続が見込まれるケース
  • 審査過程で要件を満たしていないことが判明し、却下・不承認になる見込みが高いため、申請者が取り下げを選択したケース

特に最後のケースが少なくないと見られています。つまり、「これでは通らない」と分かって、自主的に取り下げているのです。

どんな土地がダメなのか?

国庫帰属が認められるには、厳しい要件があります:

  • 境界が明らかであること
  • 工作物などが撤去されていること
  • 担保権が設定されていないこと
  • 崖地や無道路地でないこと
  • 土壌汚染がないこと

こうした要件を満たさない土地は、却下または不承認になる可能性が高いのです。

財政負担と審査の厳格化

国庫帰属した土地は、最終的に財務省(財務局)が国有財産として管理・処分します。

でも、崖地や広大な森林、利用困難な山林などは、売却収入が見込めません。それどころか、除草・巡回・安全管理などのコストが継続的に発生します。

財政制度等審議会では、管理コスト・人件費負担の増大が「新たな財政リスク」になる可能性が指摘されています。

そのため、2025年には「引き取り対象の土地を一定の要件で絞り込むべき」という議論が活発化しました。特に、管理困難で再利用見込みの乏しい土地については、要件適合性の審査が厳格になっていく方向が見込まれています。

つまり、国庫帰属の門は、今後さらに狭くなる可能性があるのです。

相続人が直面する「新しい現実」

2025年、相続人が直面している現実はこうです:

1. 登記を放置できなくなった

「登記義務+過料リスク」により、”名義だけ持って放置”という行動が取りにくくなりました。

2. 国に返すのも簡単ではない

国庫帰属は「条件を満たした土地だけが選ばれる出口」であり、誰でも簡単に「不要だから国に返す」とはいきません。

3. 選択肢を比較検討する必要がある

では、相続人はどうすればいいのか? 選択肢は複数あります:

  • 保有する:固定資産税や管理費用を負担し続ける
  • 売却する:買い手が見つかれば最善
  • 隣地の所有者に譲渡する:無償や低額でも引き取ってもらえるケースも
  • 自治体に相談する:地域によっては引き取ってくれる場合も
  • 国庫帰属を申請する:要件を満たせば可能

これらの選択肢を、登記義務化・国庫帰属制度・固定資産税の扱いなどを総合的に見たうえで比較検討する必要があるのです。

2025年のメッセージ:早めに専門家に相談を

2025年が示したのは、「相続した土地を放置できない時代が本格的に到来した」という事実です。

登記義務化により、3年以内に何らかの対応を迫られます。国庫帰属は一つの選択肢ですが、万能ではありません。

早い段階で専門家と相談しながら方針を決めることが、従来以上に重要になっています。

もし今、相続した土地について「どうしよう」と悩んでいるなら、それは行動を起こすべきサインです。

まずは専門家に相談してください。弊所は宅地建物取引士の資格も保有している不動産のプロでもあります。お早めの相談をお待ちしております。

相続登記義務化のポイント:

  • 取得を知った日から3年以内に登記が義務
  • 正当な理由なく違反すると10万円以下の過料
  • 2025年は実際の制裁が現れ始める端境期

国庫帰属制度のポイント:

  • 申請全体の約47%しか帰属に至っていない
  • 境界明確・工作物なし・崖地でないなど厳しい要件
  • 今後さらに審査が厳格化される見込み

2025年、相続した土地を「放置する」という選択肢は、もはや現実的ではなくなりました。早めに動くこと、専門家に相談すること――それが、あなたと家族を守る最善の道なのです。

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