
「毎年110万円ずつ、子どもに贈与しておけば相続税を減らせる」――長年、こう信じられてきました。
でも、2024年以降、この常識が大きく揺らいでいます。生前贈与加算の期間が「相続開始前3年以内」から「7年以内」へと延長されることになったのです。
2025年は、この変化が実務の現場に本格的に影響を与え始めた年でした。
従来の「3年ルール」から「7年ルール」へ
通常の暦年贈与では、年間110万円までは贈与税がかかりません。ただし、「相続開始前3年以内に行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算する」――これが「3年ルール」でした。
令和5年度税制改正により、この期間が「相続開始前7年以内」に延長されました。政府は「死期を意識した駆け込み贈与で過度に節税できる状況を是正したい」という考え方を示しています。
いつから適用される?
令和6年(2024年)1月1日以後の贈与から対象ですが、段階的に適用されます。
- 〜2026年の相続:加算対象は3年以内(従来通り)
- 2027〜2030年の相続:段階的に4〜6年へ延長
- 2031年以降の相続:完全に7年以内が加算対象
2025年に相続が発生しても、まだ3年ルールが適用されます。でも、2024年・2025年に行っている贈与は、今後の相続(2027年以降)で7年ルールの対象になる可能性があるのです。
2025年の実務:「将来を見据えた設計」が標準に
ここが2025年最大の変化です。
相続税の申告自体は2025年時点で3年ルールのままですが、「今の贈与が2030年代の相続税にどう効いてくるか」を前提としたシミュレーションが、税理士やファイナンシャルプランナーの面談で標準になっているようです。
3年ルール前提の贈与設計が、事実上通用しなくなってきたのです。
緩和措置:延長4年分は「総額100万円控除」
延長された4年間(相続開始前4〜7年)の贈与については、合計100万円を控除できます。
例:4年間で毎年110万円贈与 → 合計440万円 → 100万円控除 → 340万円を加算
税負担はわずかに軽減されますが、それでも増税的改正であることに変わりはありません。
実務上の対策1:早期贈与の重要性
7年ルールでも基本は同じです。「贈与から7年を超えて生存すれば、その贈与は加算対象にならない」のです。
ですから、健康なうちから早めに贈与を始めることが重要です。ただし、死亡時期は予測不能なので、「7年逃げ切り」を確実に狙えるわけではありません。
実務上の対策2:「孫への贈与」が再注目
2025年に再び注目されているのが、孫への贈与です。
なぜ孫への贈与なのか?
生前贈与加算の対象となるのは、「相続または遺贈により財産を取得した者」への贈与です。
一般的に、孫は法定相続人ではありません。ですから、「相続人でない孫への贈与で、かつその孫に相続や遺贈で財産を渡さない場合」は、生前贈与加算の対象外なのです。
2025年のトレンド
子への贈与は7年加算の対象になり得ますが、孫への贈与は原則として加算対象外。そこで、孫への教育資金贈与や結婚・子育て資金贈与を組み込んだプランニングが2025年に再注目されています。
「子と孫、両方に計画的に贈与する」という戦略が、7年ルール時代の新しいスタンダードとして浮上してきたのです。
注意点
- 孫が代襲相続人になる場合や、遺言で孫を受遺者にする場合は、加算対象になります
- 孫が直接相続すると相続税が2割加算されます
- 家族全体での資産配分バランスも考慮が必要です
まとめ:2025年、贈与戦略の見直しが標準に
7年ルールのポイント:
- 生前贈与加算が3年から7年に延長(2024年1月以降の贈与から)
- 2031年以降の相続から完全適用、それまでは段階的移行
- 延長4年分は合計100万円の控除あり
2025年の実務変化:
- 「将来の相続税」を見据えたシミュレーションが標準に
- 早期贈与の重要性が再認識された
- 孫への贈与を組み込んだプランニングが再注目
もしあなたが生前贈与を考えているなら、2025年は戦略を見直すべきタイミングです。
必ず税理士に相談してください。「7年ルールを踏まえた贈与プランを立てたい」と伝えましょう。
2025年、生前贈与の常識が変わりました。その変化を正しく理解し、あなたに最適な戦略を立てることが、これからの相続対策の鍵になるのです。








