「デジタル遺言」を実際に体験してみて。

遺言公正証書 同一事項証明書面

11月19日に公証役場で遺言公正証書を作成しました。そのときの画像がこれです(個人情報保護の観点から、裏移りしないようにして部分的に拡大しました)。同業の先生は、すぐに「おや?」と思ったはずです。それも、含めてはじめてのデジタル遺言体験記を書いてみます。

これまで遺言公正証書を作るときって、紙の原本に私と証人2人、それから公証人が署名して実印を押すのが当たり前でした。ところが今回、署名がタブレットPCに電子サインをする方式に変わっていたんです。タッチペンで画面に氏名を書き込むと、それがPDFに埋め込まれる仕組みになってました。

これは2023年6月に公証人法や民法が改正されたことを受けての変化で、2025年10月1日に正式施行されたデジタル化の流れなんですね。公証人の方は電子サインに加えて、日本政府認証局発行の官職証明書を用いた電子署名も行うそうで、これによって改ざんを検知できる仕組みになっているとのことでした。今回利用した公証役場では、つい1週間前に始まったそうです。

そして、ここからが本題なんですが、渡された書類の呼び方が変わっていたんです。従来は「正本」と「謄本」という名称でしたが、今回は「同一事項証明書面」と「全部事項出力書面」という名前になっていました。最初は「え、何これ?」と戸惑いましたが、公証人の方に聞くと、電子化に伴って名称も変更されたとのこと。

念のため、これらの書類の意味を整理しておきますね。

原本は、遺言者、証人2名以上、公証人それぞれが署名・電子サインしたもので、世の中に唯一のオリジナルです。電磁的記録で作成された公正証書原本は、日本公証人連合会が運営するシステムで保存されます。

同一事項証明書面(従来の「正本」)は、原本の写しでありながら原本と同じ効力を持つものです。相続における法律上の手続き、たとえば不動産の登記変更などで使えます。正本は遺言執行者で預かることが多いですね。

全部事項出力書面(従来の「謄本」)は、原本の写しではあるものの、原本と同じ効力はなく、内容を確認するための資料という位置づけです。

これらを従前どおり公証人の署名押印がされた紙の文書として発行することも、公証人の官職証明書による電子署名が付された電磁的記録として発行することも可能になったそうです。

ただ、正直に言うと、実際に体験してみて「まだまだこれからだな」というのが率直な感想です。

公証人の方も電子化されたばかりのシステムと新しいタブレットPCに戸惑っている様子でした(いわゆるフリップ型のモバイルPCでした。この手のPCはASUSやHPが強いという印象があります。IT畑出身だとどうしてもこういう所に目が行きます)。また、電子署名のための通信がなかなかつながらず、手続きの途中で何度か待たされることもありました。せっかくのデジタル化なのに、かえって時間がかかってしまったんです。

将来的には自宅からウェブ会議で公証人とやりとりをして遺言を作ることも可能になるそうですが、今の状況を見る限り、まだ安定して運用できるまでには時間がかかりそうです。

制度としては素晴らしい一歩だと思います。でも、システムの安定性や操作性の向上、そして現場の公証人の方々がスムーズに対応できるようになるまで、改善の余地は大きいなと感じました。これから遺言を作る方は、時間に余裕を持って公証役場に行くことをお勧めします。デジタル化の過渡期ならではの「想定外」が起こるかもしれませんからね。

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