3.【デジタル遺言】デジタル形式で作成する遺言書(5)

デジタル遺言

【3-5と3-6のコラムのポイント – 30秒で読む】
デジタル遺言制度の現状と将来展望。
公正証書遺言のデジタル化:2025年10月から正式開始。要件を満たせばオンライン作成が可能に。本人確認・真意確認は厳格に維持。
自筆証書遺言のデジタル化:法制審議会で検討中。2025年7月の中間試案では、証人立ち会い・録画を要件に、自筆・押印なしでのデジタル作成を認める方向。
海外事例:カナダは2021年に電子遺言を導入(電子形式文章、電子署名、2人以上の証人が要件)。
今できること:デジタルツールを「下書き」として活用し、現行法に則った形(自筆証書遺言または公正証書遺言)で正式に作成。法制度の変化を待たず、今できる準備を始めることが重要。

3-5. 将来の展望:デジタル遺言制度の行方

最後に、日本におけるデジタル遺言制度の今後について、少し展望してみましょう。

公正証書遺言のデジタル化は始まった

2025年10月1日から、公正証書遺言のデジタル化が正式に始まりました。これは大きな一歩です。

従来、公正証書遺言を作成するには、公証役場に足を運び、公証人と証人の前で口述する必要がありました。高齢で外出が困難な方や、遠方に住んでいる方にとっては、大きな負担でした。

新制度では、要件を満たせばオンラインでの作成が可能になりました。ただし、本人確認や真意確認のため、マイナンバーカードなどでの認証や、ビデオ通話での確認など、厳格な手続きは維持されています。

自筆証書遺言のデジタル化は検討中

自筆証書遺言のデジタル化については、法制審議会で検討が続いています。

2025年7月に公表された中間試案では、証人の立ち会いと録画を要件に、自筆や押印なしでもパソコンやスマホで作成したデジタル遺言書を有効にする方向で議論が進んでいます。

新制度が導入されれば、遺言書作成のハードルが大きく下がり、より多くの人が遺言を残せるようになるでしょう。ただし、本人確認や真意確認をどのように担保するかなど、解決すべき課題も多く、制度設計には慎重な議論が必要です。

海外の事例:カナダの電子遺言

参考までに、海外の事例を見てみましょう。

カナダでは2015年に統一遺言法が採択され、2021年に電子遺言が正式に導入されました。現在は、自筆遺言を含む5つの方式から選択できるようになっています。

電子遺言の要件は:

  • 電子形式の文章であること(録音や録画ではない)
  • 遺言者または指定された他者が電子署名を使用
  • 2人以上の証人の立ち会いとその署名

日本の法制審議会でも、このような海外の事例を参考にしながら、日本に適した制度設計が検討されています。

3-6. 今できること、これから変わること

デジタル遺言をめぐる状況は、まさに「変革の最中」にあります。

今できることは:

  • デジタル遺言アプリを「下書きツール」として活用する
  • 作成した内容を紙に書き写して自筆証書遺言にする
  • または公証役場で公正証書遺言として正式に作成する(2025年10月からオンラインも可能)

これから変わることは:

  • 自筆証書遺言のデジタル化が法制化される可能性
  • より多くの人が手軽に遺言を残せるようになる

法制度の変化を待つのではなく、今できる形で準備を始めることが大切です。デジタルツールを活用しながら、現行の法律に則った形で遺言を残す。この現実的なアプローチが、現時点でのベストな選択と言えるでしょう。

次の章では、デジタル資産とデジタル形式の遺言、この2つをどう組み合わせて、自分に合ったデジタル遺言のかたちを作っていくかについて、実践的に考えていきましょう。

*こちらの「デジタル遺言」コラムの続きは2026年年明けからの掲載予定です。次回から年内いっぱいは「2025年相続関連10大ニュース」を掲載いたします。よろしくお願い申し上げます。

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