3.【デジタル遺言】デジタル形式で作成する遺言書(3)

デジタル遺言

【3-3のコラムのポイント – 30秒で読む】
自筆証書遺言とデジタル形式の遺言書の違いを理解しましょう。

自筆証書遺言の要件(民法968条):①全文自書(財産目録除く)、②日付自書、③氏名自書、④押印、⑤訂正は定められた方式で。パソコン入力や代筆は不可(財産目録のみ2019年からPC作成可能)。
保管方法の違い:自筆証書遺言は自宅保管か法務局保管制度(2020年7月開始、検認不要)。デジタルデータはアプリやクラウドに保存されるが法的効力なし。
将来の展望:法制審議会で自筆証書遺言のデジタル化を検討中(証人立ち会い・録画を要件に)。ただし2025年11月時点では検討段階。

3-3. 自筆証書遺言との違い

ここで、従来の自筆証書遺言とデジタル形式での作成の違いを整理しておきましょう。

法律上の取り扱い

自筆証書遺言の要件は、民法第968条で明確に定められています:

  1. 遺言書の全文を自書すること(財産目録を除く)
  2. 作成日付を自書すること
  3. 氏名を自書すること
  4. 押印すること
  5. 訂正する場合は、定められた方式に従うこと

この要件の中で「自書」というのが重要です。自書とは「自分で手書きする」という意味で、パソコンで入力したものや、他人に代筆してもらったものは認められません(財産目録を除く)。コピーしたものも自書とは認められません。

平成31年(2019年)1月13日から、財産目録に限ってはパソコンで作成したり、預金通帳や登記事項証明書のコピーを添付したりすることが認められるようになりました。ただし、その場合でも、財産目録の全てのページ(両面の場合は両面とも)に署名・押印が必要です。

押印についても、実印である必要はありませんが、認印で構いません。最高裁判所の判例では、拇印や指印でも有効とされています。ただし、トラブル防止の観点からは、実印での押印が推奨されます。

一方、デジタル形式で作成した遺言書が法的効力を持つためには、現行法では自筆証書遺言の要件を満たすか、公正証書遺言として作成する必要があります。

将来的には、法制審議会で検討されている新制度が導入されれば、証人の立ち会いと録画を要件に、自筆や押印なしでもパソコンやスマホで作成したデジタル遺言書が有効になる可能性があります。ただし、2025年11月時点では、まだ検討段階で、しつこいようですが、まだ法的効力が無いことは十分に注意してください。

保管方法の違い

自筆証書遺言の保管方法には、いくつかの選択肢があります:

自宅保管 最も一般的な方法です。金庫や机の引き出し、タンスなど、自宅の安全な場所に保管します。ただし、発見されないリスク、紛失のリスク、改ざんのリスクがあります。あまりに分かりにくい場所だと死後に発見されず、分かりやすすぎると改ざんの恐れがあるというジレンマがあります。

法務局の保管制度 2020年7月10日から、法務局が自筆証書遺言を保管してくれる制度が始まりました。この制度を利用すると、遺言書は法務局でスキャンされてデジタルデータとして保管され、原本も保管されます。紛失や改ざんのおそれがなく、遺言者の死後に法務局が相続人に遺言書の保管を通知してくれます。また、家庭裁判所での検認手続きも不要になります。

ただし、保管を申請する際には、遺言者本人が法務局に出向く必要があります。また、遺言書の様式(A4サイズ、余白の指定など)が決められているため、それに従って作成する必要があります。

銀行の貸金庫 銀行の貸金庫に保管する方法もありますが、遺言者の死後に金庫を開けるには相続人全員の同意が必要になるなど、手続きが複雑になります。

信頼できる人に預ける 弁護士や司法書士などの専門家、または信頼できる親族に預けるという方法もあります。

デジタル形式の遺言データの保管は、サービスによって異なります:

  • アプリの場合:スマホやタブレット内、またはアプリ提供企業のサーバーに保存
  • クラウドサービスの場合:利用者の端末またはクラウド上に保存
  • ブロックチェーン保管:分散型台帳技術で改ざん防止

ただし、繰り返しになりますが、これらのデジタルデータそのものには法的効力がないため、最終的には紙に書き写して自筆証書遺言にするか、公正証書遺言として作成する必要があります。

公正証書遺言のデジタル化が進めば、将来的には電子データとしての保管が正式に認められることになりますが、現時点ではまだ過渡期にあります。

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