
2. デジタル資産を対象にした遺言
前の章で、デジタル遺言には2つの意味があることをお話ししました。ここからは、その1つ目である「デジタル資産を対象にした遺言」について、具体的に見ていきましょう。
あなたは今、自分がどれだけのデジタル資産を持っているか、すぐに答えられますか?
2-1. デジタル資産の種類を知る
デジタル資産とは、インターネットや電子機器上に存在する、財産的価値を持つ情報や権利のことです。形はなくても、私たちの生活に深く結びついた、れっきとした「財産」なのです。
具体的にどんなものがあるのか、整理してみましょう。
金銭的価値のあるデジタル資産
まず、最も分かりやすいのが、直接的に金銭的価値のある資産です。
ネット銀行・ネット証券の口座は、今や多くの人が利用しています。楽天銀行、住信SBIネット銀行、ソニー銀行といったネット専業銀行の口座や、SBI証券、楽天証券などのネット証券口座。これらは従来の預金や株式と同じく相続の対象となりますが、紙の通帳がないため、相続人が存在に気づかないリスクが高いのです。
暗号資産(仮想通貨)は、特に注意が必要な資産です。ビットコイン、イーサリアムなどの暗号資産は、日本暗号資産取引業協会の調査によると、2023年1月時点で預託金残高が9千億円にも及び、口座保有者は約600万人以上と推定されています。暗号資産の最大の問題は、秘密鍵やウォレット情報が分からなければ、永遠にアクセスできなくなってしまうことです。実際、ビットコイン総量のうち約2割が、秘密鍵の紛失によりアクセス不能になっているという説もあります。取引所を通じて取引していた場合は、相続人が取引所に届け出ることで手続きができますが、自分で管理していた場合は、秘密鍵の情報を残していなければ、相続は極めて困難です。
電子マネーやポイントも見逃せません。PayPay、楽天Edy、Suicaなどの電子マネーのチャージ残高、楽天ポイントやTポイント、Amazonポイントといったポイント。これらは金銭と同等の価値を持つため、相続の対象となります。
サブスクリプションサービスも重要です。Youtube Premium、Netflix、Spotify、Amazon Primeなど、月額課金サービスの契約のことです。これらは相続というより「負債」として承継される可能性があります。本人が亡くなっても自動的に解約されるわけではないため、家族が気づかなければ利用料金が発生し続けてしまうのです。
思い出や情報としてのデジタル資産
金銭的価値はなくても、家族にとって大切な資産もあります。
クラウドストレージのデータには、かけがえのない思い出が詰まっています。Google Drive、iCloud、Dropbox、OneDriveなどに保存された家族の写真や動画、重要な文書ファイル。特に最近は、スマホで撮影した写真を自動的にクラウドにバックアップする設定にしている人も多く、本人のデバイスよりもクラウド上により多くのデータが保存されているケースも少なくありません。
SNSアカウントについては、後ほど詳しく説明しますが、Facebook、Instagram、X(旧Twitter)、LINE、TikTokなどのアカウントには、投稿履歴や友人とのやりとりなど、故人の人となりを伝える貴重な記録が残されています。
メールアカウントも重要です。Gmail、Yahoo!メールなどのメールアカウントには、重要な連絡、契約情報、他のサービスのアカウント情報(パスワードリセットメールなど)が保存されていることが多く、デジタル資産全体の入り口となる可能性があります。
ブログやウェブサイトを運営していた方の場合、そのコンテンツも遺産となります。WordPressなどで作成した個人ブログ、noteやアメブロなどのブログサービス、独自ドメインのウェブサイトなど、長年かけて蓄積してきた情報資産です。
デジタル機器そのものも資産
忘れてはならないのが、スマートフォンやパソコン、タブレットといったデジタル機器そのものです。これらは物理的な「物」として相続の対象になりますが、中に保存されているデータも同様に相続の対象となります。ただし、多くの場合、ロック解除のパスワードが分からなければ、中身にアクセスできません。


